決意はもたない
Presentser:煉
Summary:エメ光/小説
Presentser:煉
Summary:エメ光/小説
彼女の呼吸が荒い。浅く、熱の籠った呼気が彼女の空いた口から幾重にも吐き出されている。立て続けに何度もたどり着いた絶頂から続く余韻が抜けきれていない証だった。
「あっ、……っ♡」
呼吸を落ち着かせる間も与えられない。下着越しに硬く勃ち上がっている陰核を再び剛直で擦られ、豊かな膨らみの先でこれまた硬く張り詰めている乳首を指で強く摘まれれば、彼女の荒い呼吸に甘さが乗った。力無くぐったりとしていた身体がヒクヒクと震え出し、彼女の背後で寄り添うように寝転がっているエメトセルクに持ち上げられた片足の先が跳ねる。自らが与える快楽に素直に反応するその様子に、彼女を苛んでいる張本人であるエメトセルクが愉しそうに口元を歪めていた。
ショーツ以外の着衣を全て脱がされ、褐色色の肌が剥き出しになっている彼女に対し、エメトセルクといえば胸元をはだけている程度にしか露出していない。エメトセルクが彼女を覆い被さるように抱き込めてしまえば、一糸の乱れもない普段通りの豪奢な皇帝服の着こなしに見えるだろう。とはいえ、己が手で乱れに乱れている彼女の姿にエメトセルクも興奮しているようで、軽く汗ばんだ額に前髪が少し濡れていて、金色の瞳は熱ばんだ欲の色で輝いていた。
「英雄、色を好むとはよく言ったものだ。何度達しても留まるところがないな。気持ちよさそうで何よりだよ。……さて、もうそろそろ"これ"が欲しいんじゃあないか?」
腕枕をするように彼女の背後から肩に回した手で、乳房を揉み込み指でくりくりと乳嘴を刷り込む動きを繰り返しながら、エメトセルクが甘い誘いの問いを投げる。エメトセルクの声を受け取る、ヴィエラの特徴でもある長い耳が小刻みに震えている。急に口を紡いで答えない彼女を尻目に、エメトセルクはもはや下着として機能していないほどに愛液に塗れて秘部に張り付いているだけの布をずらし、現れた蜜口に先を当てた。
「あっ、まって、入れちゃ、だめ…っ♡」
くちゅりと擦り合わされた感触を楽しんでいると、彼女が目を見開いた。焦りの色を浮かべた声色でエメトセルクに静止をかける彼女だが、腰の動きがまるでなっていない。腰をそれ以上進めないまま彼女の様子を伺っているエメトセルクの分身を煽るように誘うように、自ら秘部を擦り付けるような腰つきを見せていた。身体と言葉があべこべだ。下腹部に目線を向ける彼女の目には、困惑と期待がない混ぜになっているようにしかエメトセルクには見えなかった。挿入以外の行為には素直に甘えて男のされるがままになっているというのに、エメトセルクが先へ進もうとすると今日の彼女は決まって待ったをかける。
ベッドに雪崩れ込んでからというもの、彼女はずっとこんな調子だった。
彷徨う階段亭で酒を引っ掛けた後、ペンダント居住区にある彼女の自室に移動し、酒の酔いに任せて始まる舌を絡ませ合う深い口付けと軽い愛撫。もはや定番になりつつあるこの流れが、二人の密かな情事に耽る合図になっていた。そこまでは彼女の様子は普段通りだったのだが、いざベッドに移ってエメトセルクが彼女を組み敷くと何かを思い出したような顔をしてこれ以上は、と続きを拒み出した。しかし、既にスイッチが入ってしまっていたエメトセルクは、素直に彼女の言うことを聞く気にはなれなかった。せめて理由に納得の行くものであればと問いかけてみたが、彼女の方はごにょごにょと言い淀んではっきりとした理由を話さない。それでは承諾しかねると、半ば強引に彼女への愛撫を再開した。
これで更に拒むようであれば流石に止めるかとエメトセルクも頭の片隅で考えてはいた。しかしそれでも、敢えて彼女の意識がこちらに向くように彼女が好む愛撫ばかりを繰り返してやれば、エメトセルクの想定通り彼女はとろりと顔を蕩けさせて縋りついてきた。どうやら本気で嫌だと思っている訳ではないらしいと解釈したエメトセルクが本格的に彼女に覆い被さったのは、もう小一時間ほど前のことだった。
途中、我慢も限界だったエメトセルクが挿入を試みたが、融けさせた思考を正気に戻した彼女から頭を振られた。ここまで来れば彼女も辛いだろうに何をそんなに拒むのかと呆れたが、恐らく再度理由を尋ねても口を割らないだろう。ならば本格的に理性を飛ばしてやればいいかと、体位を変えてからショーツ越しの素股を始めて今に至る。
「そんなに、押しつけたら…っ」
この状況が耐えがたいのか恥ずかしいのか目を潤ませながら訴える彼女に、押しつけているのはどちらだとエメトセルクは内心独りごちる。無意識かわざとか、彼女が腰を揺らす度に形の良い尻が下腹部に押しつけられて感じるその弾力に、思わず射精してしまいそうになるのを自尊心で堪えているのを知りもしないで。
自分も入るか入らないかの境目で焦らして彼女の反応を楽しんでいる自覚はある。入口近くが刺激されるだけでも感じているようで、偶に子犬が鳴くような短く高い嬌声を上げる彼女に、下半身に熱がもっと籠って痛いほど張り詰めていくのが分かる。エメトセルクにとっては生殺しもいいところで、全くもって厄介な状況だった。
エメトセルクがもう少し腰を推し進めれば、そのまま蜜壺へ入ってしまうだろう。触れあっている場所からくちゅくちゅと卑猥な粘着音が鳴り止む気配はない。彼女の耳の先もずっとせわしなく小刻みに震えている。ヒューランやエレゼンよりも聴覚が優れていると聞くヴィエラの耳が敏感にあらゆる音を拾うのも、彼女の羞恥心と発情を育てるのに一役買っているのかもしれない。
「厭だと言いながら押しつけているのはどちらだ……っ。こんなにいやらしく涎を垂らして、私を食べたがっているのはお前もだろう……? いいのか、このままでは入ってしまうぞ……?」
彼女の顎に手を掛け、やや強引にぐいと顔を自分の方へ向けさせたエメトセルクが意地の悪い顔をしながら彼女の目を見つめて言う。エメトセルクの言う通り、蜜壺から溢れ出るばかりの愛液でエメトセルクの欲の象徴はしとどに濡れていた。入ってしまう、という警告に一体何を思ったのか、それだけで彼女はびくりと身体を弾ませて、潤み欲を孕んだ目でエメトセルクを見つめ返した。
「やぁ…ダメなのに……っ 入っちゃうよぅ……♡」
その目はもう、挿れてくれと懇願しているも同然だろうとエメトセルクは思った。目は口ほどに物を言うとはよくいったものだ。半開きの口から覗く舌に惹かれて、顎を引き寄せて口づける。ほぼ同時に、蜜口から先が外れるようにわざと腰をずらし、彼女の秘部を剛直で擦り上げてみせた。
「んっ……んんぅーーっ! ……ふぁ、ひもちいぃ…っ! んぁ…っ」
陰茎の雁首が陰核を刺激したのがお気に召したらしく、口外に突き出した舌を絡ませたまま健気に喘ぎ声を漏らす彼女からに目を細める。どうやら今の一撫でで軽くイッてしまったようで、びくびくと身体を震わせながら見つめ合ったままの瞳が一層とろりと溶けて焦点が滲んでいる。
エメトセルクが少しだけ腰を引いて再度、蜜壺の入り口に欲の先端を当てがう。今度は僅かに強く亀頭を押しつけてみせれば、柔らかい粘膜が吸いつくように収縮した感触がした。
「やぁ、〜〜〜っ♡」
「……っ、は……っ。ああ、入ってしまったな……っ」
もう、彼女のダメを間に受ける気などない。僅かに漏れた形だけの拒絶を無視して、剛直の一番太いところを彼女の胎に飲み込ませた。くぷんと一切の抵抗なくエメトセルクを胎に受け入れた彼女が声にならない嬌声をあげる。
背面側位と呼ばれる体位故に奥深くまで突いてやることができないが、できるだけ腰を押し進められるよう彼女の足を抱えてできるだけ大きく広げさせる。エメトセルク自身が彼女の蜜壺を堪能するためではあるが、彼女だってこの方がより気持ちよくなれるはずだ。
「あぁっ、あん、んぅ……っ♡」
一突きする度に短い嬌声を出して喘ぐ彼女に気をよくして、じゅぶじゅぶと粘着質な音を立たせながらピストンを続ける。この体勢ではやはり、彼女の奥まで全て蹂躙することは難しい。が、それでも彼女が悦ぶ場所は最奥だけではないことをエメトセルクはもう知っている。
「ひぁ!? まって、は、んぁっ」
びくんと背をしならせて喘ぐ彼女の言うことは聞き入れず、胎の浅い位置にある、指で触れればザラついて膨らみを帯びているであろう彼女の気に入りの場所を重点的に穿ってやる。
「そこばっかりぃ……らめ、でちゃ、ぅ、……あんっ」
熱い吐息を短く繰り返し、涙を浮かべながら身悶える彼女の姿はひどく扇情的だ。挿れたばかりだというのに、彼女の蜜壺は高みへと至る前兆を見せていた。イく時の表情を見たいと思って彼女を背中越しに見下ろすと、彼女の手がシーツをぎゅうと握り絞めている。絶頂を堪えている仕草だ。
「出せばいい…、イってしまえ」
「ぁ、イッ……、んんーーーっ!」
長い耳の付け根に口を寄せて囁くように促してやれば、彼女は背を反らしながら今日一番と激しくビクビクと痙攣しながら絶頂を迎える。同時にぷしゃりと吹かれた潮がシーツを濡らして大きな染みを描いていった。
「っ…! 随分と締め付けてくれる…っ」
エメトセルクが覗き見た、達した瞬間の表情の色香に中てられて、達したばかりの彼女を省みることなく抽送を繰り返す。
「あ、あぁあ…っ、あんっ、今イッ、て、イッてるの、にぃ…!」
彼女が訴えるように、蜜壺は休みなくうねり続けている。まだ足りないとばかりに、届きにくい最奥へと誘うようにきゅううと締めつけられて、エメトセルクも思わず熱い息を吐いた。
「あぁ…っ、気持ちいいな……?」
背後から覗き込むようにまた彼女を見つめながらエメトセルクがそう問えば、彼女は涙を滲ませとろんとした顔を正直に曝け出した。もう、そこには拒絶も困惑もない。
「ぅん……♡ きもち、いいよぅ……」
もっと、と意図的に腹に力を込めてきゅうと締め付けてきた彼女に、やっと観念したかとエメトセルクは満足げに口角を吊り上げる。締め付けた仕返しにと、少しばかり放っていた胸の頂きをピンと指で弾いてやればまた、短く甘い嬌声が漏れる。
彼女の胎内を今日初めて、白濁で穢すまでそう時間はかからなかった。もちろん、その一回で終わらせるつもりなど散々彼女の待ったに応え続けてやったエメトセルクには毛頭なかった。
エメトセルクには言えていなかったが、彼女にはちゃんと拒むだけの理由はもちろんあった。正確に言うと、彼女はエメトセルクとの情事は嫌ではない。相性がいいのか、エメトセルクが上手いのか、最中はどんな行為をされても気持ちよさにしか支配されないし、終わった後はぐったりと疲れ切ってしまうが同時に心身共にさっぱりとした心地になれる。
もう何度も、指折り数えられるくらいには彼女はエメトセルクとこの室内で事に及んでしまっている。が、そもそもこの部屋はそもそも水晶公が用意してくれた場所であり、そしてアルバートが自由に出入りしている空間でもあることを彼女自身あまり深く考えていなかった。特に、アルバートが幽霊のように(実際そうなのだが)この部屋を自由に出入りしていることを特に気に留めたことはなかった。最初はびっくりしたけれど。
しかし、その認識を改めなければいけないと思った出来事が訪れる。とある先日、また突然この部屋に姿を表したアルバートは妙にそわそわとして挙動不審な態度を取った。何かあったのだろうかと尋ねてみれば、彼は気まずそうに告げた。
あのアシエンと寝たのだろう、と。
ぴしりと固まってしまった彼女に、アルバートは慌てて言葉を続けた。ああ、いや。俺は別にお前を咎める気はない。俺はそういう機微には疎いし、お前だって何も考えずにアシエンと関係を持ってるとは思ってないしな。ただ、その、この部屋とは……。
どうやらアルバートは、この部屋を男女が致したことのある部屋だという認識を持ってしまったようだった。気をつけて彼の様子を伺っていると、どうやら妙にそわそわとしているのは寝台がある空間を視界に入れようとしないようにしているからだと気がついた。後に、気にしてるわけじゃないからな! と続けてくれたアルバートだったが、よく考えてみると自分以外には姿が見えないアルバートと周囲を気負わずに話せる空間として、この部屋は欠かせない。出入りするなと言う訳にも言うつもりもないけれど、アルバートに室内で起こっていることを意識され続けるのもいたたまれない。
水晶公も直接的なことは何も言わない。だが、彼はクリスタリウムの長として、この街で起こっている様々な事象を把握していることは知っている。こちらを気遣って、言わないでいてくれるだけなのかもしれない可能性に気づいてしまっては、今までのようにおいそれとこの部屋でエメトセルクと事を運ぶのは難しい。いやだって、流石に恥ずかしい。それくらいの羞恥心は持ち合わせている。
だから、彼女は決心したのだ。この部屋で、エメトセルクとそういった行為をするのはこれから止めておこうと。
……そう決意した日から初めて、彷徨う階段亭でエメトセルクと酒を飲み交わすまでは、確かに。
「まったく……おい、いつまで拗ねているつもりかね」
肘を枕にして横寝しているエメトセルクがシーツからはみ出ているヴィエラの耳に話しかける。耳の持ち主は頭まですっぽりと掛布を被り続けたままだ。
沈黙を続けたまま動かない耳をじぃと見つめたあと、はぁ…と呆れを隠さない溜息を吐けば、ようやっとぴくりと耳が動いた。
「……拗ねてない……」
シーツの中からくぐもった声が返ってきた。まだ何か言いたいことがある気配に、エメトセルクは口を挟まずに沈黙を続ける。
「この、部屋でするのは……色々と問題があって……。それなのにぃ……」
ぶつぶつと聞こえるか聞こえないかくらいの声量がエメトセルクの耳に届く。情けない、という言葉も聞こえた気がする。事に耽る前に問いただした時よりは内容のある返答だったが、それでもいまいち要領を得ない。ふむ、とエメトセルクは考えるそぶりをして、彼女が懸念している何かを想像した。
「お前が何を心配しているのかは知らんが、この部屋には人払いの術が掛けてある。私がこの部屋に入ってから、誰かが近づいた痕跡は無いぞ」
「へ?」
ばさりと頭から被っていた掛布を自ら剝ぎ取ってようやく彼女が顔を出した。人払い? と不思議そうに小首を傾げているのを見て、エメトセルクが続ける。
「英雄様はご多聞に漏れず大層な人気者だからなぁ。いつ誰が尋ねてくるのか、意識しながらお前を抱くのも正直面倒だ。だから……」
言いながら、エメトセルクは掛布を跳ねのけた際に乱れたのだろう彼女の前髪を手を伸ばして直している。
「あぁ、まさかお前。いつ誰かに聞かれるか分からないかもしれないと妄想して、あんなに興奮していたのか?」
にやりと嘲笑いながらエメトセルクが指摘すると、彼女は顔真っ赤にしてしてない!
と慌てだす。面白くなったエメトセルクは、彼女の前髪を弄っていた手を離して頬に滑らせてから、ぐいと彼女へ向かって顔を近づけた。
「な、なに」
「ちなみに、まだ人払いの術を解いていないと言えばどうする?」
「え」
ぽかんとした間抜け面をした彼女に、わざと意地悪い笑みを向けてやる。何かを察した彼女がまた掛布を頭から被ろうとしたので、先手を打ったエメトセルクが掛布を掴んで引き剥がす。
何も身につけていない裸体が惜しげもなく晒される。褐色の肌と真白の寝具との眩しいコントラストと、彼女の首筋や胸元に散っている鬱血痕に目をして、エメトセルクの下腹部がまた熱を帯びて鎌首をもたげ始めた。
「おお、私もまだ若いようだ。もう一戦、お付き合いいただけるかな? 英雄様」
「かな、って......! ちょ、もう無理だよっ」
「安心したまえ。事が済むまで術は解かない」
「そうじゃなくて、っていうか誰も来なかったら良い訳じゃな……、んうっ」
誰も訪れる気配のない闇の戦士の居室の扉が開かれたのは、昼も近くなってからのことだった。
ちなみに、エメトセルクがしている勘違いについて、彼女は恥ずかしがらずにちゃんと言えば結果は変わっていたかもしれないと反省したとかしないとか。
End.